こんな社員がいて困っていませんか!?
- 得意先とのトラブルが多かったり、上司や同僚に対して暴言をはいたりする。
- 何度注意をしても勤務態度が改まらない。
- 仕事をしないだけならともかく、他の社員とうまくやっていけない。
- あまりに勤務態度が悪いので上司が注意したら、上司に逆ギレしてきた。
- 同僚や経営者の悪口ばかりいいふらしている。
- 遅刻や欠勤が多く仕事に対する責任が全くない。
- 会社の規則に全く従わず、自分のルールで動いている。
- 勤務時間中に席を離れ、かつ、なかなか戻ってこない。
- 業務指示には従うものの、ふて腐れた態度をとる。
- 業務はこなしているが上司が聞くまで連絡・報告がない。
こういった問題社員だからといって、解雇が簡単にできるわけではありません。
問題社員に対しては、会社はまずその問題点を指摘して更正させる努力が必要です。
問題社員のどこが問題か、就業規則上の根拠等を示し、更正させる努力をして、なおかつ更正しなかった場合にようやく解雇できる可能性が出てきます。
そして、訴えられる可能性も考え、以上の記録をその都度取っておくべきです。大変ですが、問題社員に対して、会社は厳格に対応すべきです
■解雇権乱用法理■
労働契約法第16条(解雇)
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
- 解雇権濫用法理は、元々は裁判例の積み重ねにより確立していたものですが、平成16年に労働基準法に明記され、その後平成19年に労働契約法の成立に伴い、その規定が労働契約法に移行されました。
- 「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当」とは、言い換えれば「正当性の有無」といえそうです。
- 解雇の「正当性」の要件は、解雇の種類ごとに、さらに具体的にその基準が確立しています。
- 例えば、「整理解雇」の場合は、「整理解雇の4要件」があります。
では、問題社員の場合はどうでしょうか?
■問題社員(勤務態度不良・協調性欠如等)解雇の基準■
判例等から判断される問題社員の解雇の「正当性」の判断基準は概ね次のようになります。
- ①就業規則などの解雇理由に該当していること
- ②その行為が繰り返し行われていること
- ③会社がその者を教育・指導するなど、改善のための努力を行っても改善が見られないこと
- ④その行為により業務の遂行に具体的な支障があったこと
- ⑤その者より勤務態度が悪い者を不問にしていないこと
- 問題社員を解雇する場合でも、プロセスとしては、就業規則の服務規律違反等の根拠を示し、本人に注意を促し本人に改善の機会を与えなければなりません。
- そのプロセスを1回だけでなく数回試みて、それでもなお勤務態度等が改善されない場合に、ようやく解雇ということになります。
- 解雇は最後の手段と位置付ける。
- ・ できれば、解雇を通告する前に「退職勧奨」を試みるべきです。
- ・ 「退職勧奨」とは、本人に退職を勧めるわけですが、解雇と違い強制的なものではありません。
- ・ 強制的なものではありませんから、「退職勧奨」が受け入れられれば、合意による退職ということになります。
- ・ 解雇は一方的、強制的なものですから、解雇は会社が正当と思っていても後々トラブルになる可能性は完全には排除できません。
- ・ 合意退職であれば、後々トラブルになる可能性は排除できます(退職勧奨が実質的に強制であれば話は別です)。
- ・ したがって、「退職勧奨」が受け入れられることは、後々のトラブルを未然に防ぐというメリットがあるので、その分多少は本人にとって解雇より有利となる条件を出しても良いでしょう。
- ・ 「退職勧奨」が受け入れられなくても、会社が最後の最後まで解雇を回避しようとしていた証となり、これは後々トラブルになった場合に有利になると思われます。
- 第三者に証明できる証拠を残す。
- ・ 以上のプロセスは第三者に証明可能なように書類として残しておくべきです。
- ・ 後々に紛争になった場合、その解決方法は、簡易な順に、都道府県労働局による「あっせん」または民間ADR、「労働審判」、「裁判」となります。
- いずれも、会社の正当性を第三者に証明しなくてはなりません。
■解雇の種類■
<懲戒解雇>
懲罰としての解雇。一般には退職金も不支給になるケースが多い。就業規則の懲戒解雇に規定に該当していることが求められるが、それだけでは足りず、社会的相当性等様々な観点から厳密に判断される。労働基準監督署の認定を受ければ「解雇予告手当」は支払わなくてもよい。
<普通解雇>
基本的には、債務不履行等(労働義務の履行が不十分等)による解雇とされる。解雇予告又は解雇予告手当の支払いが必要。
<整理解雇>
事業の廃止、縮小等会社側に原因がある解雇。「整理解雇の4要件」が確立している。
- 問題社員の解雇は、その問題となる行為の程度によって、「懲戒解雇」又は「普通解雇」が考えられます。
- 「懲戒解雇」は、労働者にとっての「死刑」に等しいとされ、裁判になれば特に厳しい基準で判断されます。
- したがって、刑法に抵触する等、明確に懲戒解雇に該当し、懲戒解雇にしなければ社会や他の社員に対するしめしがつかないほどの場合以外では「普通解雇」で対処すべきです。
■個別労働関係紛争の解決制度■
あっせん
都道府県労働局または都道府県労働委員会が行う。裁判に比べて手軽な紛争解決制度。一般的には労働者が「あっせん」を申請し、会社が受けることが多い。ただし「あっせん」を受ける義務はない。「あっせん」は、専門知識を有する「紛争調整委員」が両当事者の間に入り、原則1回の「あっせん」で和解を目指す。和解が成立しなければ「あっせん案」が提示され、双方がそれを受けなければ、未解決のままになる。その他、民間ADR(裁判以外の紛争解決方法)もある。
労働審判
司法の制度で、裁判より手軽だが「あっせん」よりは重い。労働審判はそれを受ける義務があり、3人の審判員が両当事者の間に入り、原則3回の審理で決着をつける。基本的には、和解を目指すが、和解が成立しなければ審判が下され、当事者の一方が審判を受け入れなければ自動的に裁判に移行する。
裁判
最終的な紛争解決手段。
- 問題社員を解雇し、事後に紛争になった場合の紛争解決制度は、軽い順に「あっせん」、「労働審判」、「裁判」があると認識しておきましょう。
- 問題社員対応は、問題社員が事後に上記のいずれかの紛争解決制度で訴えてくると想定しておくべきでしょう。
- そうなった場合でも対応できるよう、正当なプロセスとその正当性を証明できる証拠を残すことを意識しましょう。